法人税の負担を軽減する正しい節税方法11選
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CLOSE法人税の支払いで、資金繰りが苦しいと感じる事業主もいるのではないでしょうか?節税対策により支払う法人税を減らせれば、より手元に大きな資金を残せます。この記事では、法人が利用できる11種類の適切な節税対策を紹介します。
法人税とは
法人税とは、法人の企業活動によって得られる所得に対して課される国税で、主に以下のような法人に課されます。
【法人税が課される主な法人】株式会社・合同会社・合名会社・合資会社・医療法人・協業組合・協同組合・一般社団法人・NPO法人・学校法人 |
法人税の節税とは
法人税は所得に一定の税率をかけて算出します。所得は会社の益金から損金を引いて計算をします。
法人の所得=益金 - 損金 |
益金とは企業における収益のことです。商品やサービスを販売したときの売上や、土地・建物の売却収入などがあります。また損金とは、売上原価や販促費、災害による損失など、費用や損失を指します。
法人税の計算の仕組みがわかれば、利益を減らすか損金を増やして法人の所得を減らせば、支払う法人税を減らすことは可能です。
ただし無計画に経費を使うと、かえって手元資金が減ってしまいます。また利益が減ってしまうことで、銀行からの融資が受けにくくなるなど弊害も起こり得ます。
あくまでも節税は、法律で定められたルールを理解して、税務上の仕組みを適切に利用することが大切です。
法人税の節税対策11選
ここでは、効果が高い法人税の節税対策を11個紹介します。いずれも税法上問題ないとされているものを紹介していますが、実際に利用する際は、必ず事前に税理士に相談してください。
法人名義の車を所有する
法人名義の車を所有することで、車の取得費用やガソリン代、保険料などを損金扱いにできます。
特に車両の取得費用は、減価償却費として数年に分けて経費計上できるため、高い節税効果が期待できます。
例えば新車の場合、普通自動車は6年、軽自動車は4年に分けて経費計上が可能です。
ただしプライベートで使用するときは、利用規定を作成し、一定の利用料を会社に支払うなどの手続きが必要です。
損金算入の要件を満たした役員報酬を支払う
役員報酬は原則、損金算入の対象ではありませんが、以下の要件を満たす場合は損金算入が認められます。
定期同額給与
1ヶ月以内の一定期間ごとに、同額で支払われる役員報酬のことです。一般的な月収を考えると分かりやすいでしょう。定期同額給与の金額を変更できるのは、事業年度開始から3ヶ月以内に限られます。
事前確定届出給与
役員への臨時的な報酬は原則、損金算入が認められませんが、事前に税務署に届出をしておけば損金として認められます。また臨時的な報酬を支払うことを、株主総会等で明確にしておかなければなりません。
届け出た金額と異なる条件で支払った場合は、損金として認められない(損金不算入)となるため注意が必要です。
業績連動給与
会社の業績に応じて支払われる報酬のことです。あらかじめ金額を確定させる必要はありませんが、以下の条件を満たしている必要があります。
- 算定方法が適切である
- 有価証券報告書に記載している
- 通常の同族会社以外である
経営セーフティ共済に加入する
経営セーフティ共済は、取引先が倒産したときに無担保・無保証人で、回収困難となった売掛金債権等の額か、納付された掛金総額の10倍(最高8,000万円)のいずれか少ない金額まで借り入れができる制度です。正式名称は中小企業倒産防止共済といいます。
経営セーフティ共済の掛金は月額5,000円~20万円まで選択可能で、掛金は損金に算入できます。さらに40ヶ月以上掛金を納めていれば、解約時に掛金全額が戻ります。
経営者や従業員の家を社宅にする
会社が賃貸物件を借りて、経営者や従業員に社宅として貸し出すと、経費として損金計上できます。
ただし損金とするためには、入居者から一定額以上の賃料を受け取る必要があります。賃料が無料であったり著しく低いとみなされたりすると、現物支給として課税される可能性があるため注意が必要です。
不要な在庫を処分する
不要な在庫を処分するためには、安く販売するか廃棄するといった方法がありますが、損失になるためなかなか実行に踏み切れないケースもあるでしょう。
しかし不要な在庫を抱えていても、管理コストがかかるうえ、スペースが限られている事業所では、スムーズな作業の妨げになる可能性もあります。
不要な在庫を処分するために原価より安く販売すると、差額が損金になります。廃棄した場合も、廃棄損として損金計上が可能です。そのため利益が出ているタイミングで、在庫処分をすれば節税対策になります。
赤字の繰り越し
法人で赤字になった場合、翌年以降、最長10年間、所得金額の50%まで相殺ができます。
また一定の要件を満たせば、黒字だった年の翌年が赤字になったとき、前年の黒字にさかのぼって赤字と相殺し、法人税が還付される「欠損金の繰り戻しによる還付」も受けられます。
福利厚生の充実
福利厚生を充実させる目的で支出した費用は、損金計上が可能です。損金として認められる福利厚生のうち、代表的なものを紹介します。
健康診断
一定年齢以上の希望者がすべて受診できる健康診断や、人間ドック費用は損金計上ができる。
社員旅行
社員旅行の費用も損金計上が可能。ただし旅行の期間は4泊5日以内、参加人数が全体の50%以上、旅行内容が社会通念上一般的なものであることが要件。
飲食費の負担
従業員を対象とした新年会や忘年会、送別会、その他従業員の食事の提供でかかった費用は、一定の要件を満たせば損金計上が可能。
買掛金や未払金を漏れなく計上する
通信費や社会保険料、従業員給与など今期中に発生して、支払いが来期になるような費用がある場合は、今期の費用として計上します。
また会計上、支払いは終わっていなくても、商品やサービスの引き渡しをしていれば、今期の費用計上ができるため、決算時に買掛金や未払金の計上漏れがないか確認しましょう。
30万円未満の減価償却資産を一括で計上する
青色申告している中小企業は、30万円未満の減価償却資産については、損金として一括計上ができます。ただし年間合計で300万円が限度です。
減価償却資産を一括計上すれば、償却期間で償却するよりも、節税効果が高くなります。
貸倒引当金を計上する
貸倒引当金とは、取引先が倒産して債権が回収できなくなったときに備えて、あらかじめ設定しておく積立金のことです。
貸倒引当金が損金計上できる金額については、税務調査の対象となるため計上する際は、税理士と相談してください。
生命保険や損害保険に加入する
法人向けの保険のなかには、全額あるいは一部を損金として計上できるものがあります。損害保険は損失の補填が目的のため、全額損金計上が可能です。
生命保険については、保障性が高い商品については損金として認められますが、貯蓄性があるものは資産として扱われます。
生命保険に関する税務は複雑なので、税理士に相談することをおすすめします。
まとめ
売上高は変わらなくても、適切な節税対策を行うことで、手元に残る資金を増やせます。手元に資金が残れば、設備投資や人への投資、販促費などに使えるお金が増えるため、さらなる事業拡大が見込めるでしょう。
ただし自分の判断だけで節税対策をすると、脱税と判断されてしまう可能性があります。節税対策を活用する際は、必ず事前に担当税理士に相談してください。