投稿日:2023.02.06 最終更新日:2023.11.01

インボイス制度への非難殺到で急きょ盛り込まれた軽減措置とは?

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    消費税の免税事業者でありながら納税を迫られるインボイス制度

    2023年10月からのインボイス制度(適格請求書等保存方式)が導入されると、消費税の納税事業者は「適格請求書(インボイス)」の要件を満たした請求書・領収書・納品書・レシートを使用することが義務づけます。

    そして、要件を満たした請求書などを使用するためには、インボイスの発行事業者として税務署に登録を行う必要があります。インボイスとして認められない請求書を受け取った場合、商品やサービスを購入した側は消費税の確定申告を行う際に「仕入税額控除」を利用できず、その分だけ納付すべき税額が増えてしまいます。

    インボイスの発行事業者として登録しないと商品やサービスの販売先(取引先)に迷惑をかけてしまうわけです。場合によっては、発行事業者として登録していない相手との取引関係を解消する動きも出てくるかもしれません。

    しかしながら、インボイスの発行事業者になると、「消費税の免税事業者(課税売上高1000万円以下の法人や個人)」であっても、納税の必要が生じてしまいます。免税事業者に該当しながらも、やむなくインボイスの発行事業者となる道を選び、手取りの収入が目減りしてしまうケースが多発することが予想されます。

    こうしてインボイス制度の導入は個人事業主や零細企業の経営を圧迫するのが必至で、あちこちから批判が出ていました。そこで、2022年末に公表された2023年度税制改正大綱に、急きょ盛り込まれたのが2つの軽減措置です。

    「納める消費税額=売上税額の2割」とみなす「2割特例」

    軽減措置の一つは「2割特例」と呼ばれるもので、インボイスの発行事業者(課税事業者)となった免税事業者の税負担を「売上税額(売上高に基づく消費税額)」の2割に抑えるとい措置です。この特例はインボイスの発行事業者になっていなくても、消費税を納めることにした免税事業者も対象となります。

    「2割特例」を適用できるのは、個人事業主の場合は2023年10月〜2026年末、法人は2023年10月〜2026年9月末に属している事業年度です。適用を受ける際には、確定申告書にその旨について記載します。

    通常、消費税額は「売上税額」から「仕入税額(仕入れに含まれる消費税額)」を差し引いて算出します。そのためには、仕入れにかかった費用に含まれている消費税額をすべて洗い出す作業が必要です。

    「2割特例」の適用を受ける場合は「仕入税額」の計算が不要で、「納付すべき消費税=売上税額の2割」とみなします。これは、従来から課税売上高5000万円以下の事業者に認められてきた「簡易課税制度」とよく似た仕組みです。

    「簡易課税」では業種の違いによって事業が6つに区分されており、90%、80%、70%、80%、70%、60%、50%、40%といった異なる数値の「みなし仕入れ率」が定められ、それぞれを「売上税額」から差し引けるようになっています。「2割特例」は、「簡易課税制度」で80%の「みなし仕入れ率」が適用される「第二種事業:小売業、飲食料品関連の農業・林業・漁業)」と同様の結果になるわけです。

    「簡易課税制度」における「みなし仕入れ率」が90%で、「納付すべき消費税=売上税額の1割」となるのは「第一種事業(卸売業)」です。他の5つの事業区分に該当する業種(卸売業以外)は、「2割特例」を選んだほうが有利となるケースが一般的です。

    「簡易課税制度」のような事前の届出も不要で、経費のインボイスを保管せずに済む点もこの特例のメリットに挙げられます。ただ、先述したようにあくまで時限措置にすぎず、その後は通常の計算式に基づく課税か、あるいは「簡易課税制度」を用いた課税のどちらかを選ぶことになります。

    1万円未満の少額取引なら、インボイスなしでも「仕入税額控除」が可能に

    もう一つの軽減措置は、「1万円未満の仕入税額控除」です。現行の税制では、3万円未満の取引なら請求書や領収書の保管がなくても記帳だけで「仕入税額控除」を受けられます。

    ところが、2023年10月以降は所定の要件を満たしたインボイスを保管しておかなければ、「仕入税額控除」を適用できなくなります。当然ながら、少額の領収書まですべて受け取って整理しておくのは非常に煩雑なことで、その点に関しても批判の声が上がりました。

    そこで、1万円未満の少額取引なら、インボイスがなくても「仕入税額控除」を受けられるようにするのがこの軽減措置です。やはり、こちらも次元措置で、2023年10月1日〜2029年9月30日までに行った課税仕入れが対象となります。

    同じように少額取引におけるインボイスを不要とする措置については、「返還インボイス(返品・値引き・割り戻しに伴って発行された伝票)」においても適用されることになりました。2023年10月1日以降の返品・値引き・割り戻しで、税込対価が1万円未満のものに関しては、「返還インボイス」が不要とみなされます。

    インボイス発行事業者としての登録手続きでもハードルが下げられた

    インボイス発行事業者となるためには、インボイスを発行したい課税期間の初日の前日から起算して1カ月前までに登録申請書を提出しなければなりません。この期限についても、緩和措置が取られることになりました。

    具体的には、課税期間の初日から起算して15日前までに登録申請書を提出すれば、登録が間に合うようになります。登録を取り消したい場合も、「インボイスの発行をやめる予定の課税期間の前の課税期間の末日から起算して30日前の日の前日まで」という規定が「取り消したい課税期間の初日から起算して15日前」に改められます。

    まとめ:免税事業者にとってインボイス制度の導入は一大事!制度の正しい理解を‼

    インボイス制度が導入されると、これまで納税を免除されてきた個人事業主や零細企業にも消費税の確定申告が関わってくる可能性が極めて高いのが現実です。「2割特例」をはじめとする軽減措置をきちんと活用しなければ、不要な分まで消費税を納める羽目になりかねません。

    不明点は所轄の税務署などできちんと確認し、正しく仕組みを理解したうえで納税の軽減を図るのが肝要です。さらに制度が見直される可能性もありますし、とにかくインボイス制度の導入は免税事業者にとって一大事ですから、積極的に情報収集を行ったほうがいいでしょう。

    この記事を書いた人

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