法人も青色申告は可能?メリット・デメリット、手続きの流れを解説
目次
CLOSE法人も青色申告は可能です。むしろ法人にとってメリットが多いため、多くの企業が青色申告で申告をしています。この記事では、法人が青色申告をするメリット・デメリットや手続きの流れについて解説します。
ほとんどの法人は青色申告を利用している
令和3年に財務省が発表した「記帳水準の向上について」によると、稼働中の法人のうち、99.3%が青色申告を利用しています。
多くの法人が利用していることから、法人にとって青色申告を利用するメリットが大きいと推測できます。
それでは、法人が青色申告をすると、具体的にどのようなメリットがあるのかを見ていきましょう。
法人が青色申告をする4つのメリット
法人が青色申告をするメリットは、以下の4つです。
- 欠損金の繰越控除
- 欠損金の繰戻し還付
- 30万円未満の減価償却資産を一括で経費計上
- 中小企業投資促進税制
それぞれ詳しく解説します。
欠損金の繰越控除
欠損金の繰越控除とは、当年の赤字を翌年以降の黒字と相殺できる仕組みのことです。例えば、ある法人の前年赤字が100万、当年の利益が80万円だったとします。
本来は80万円に対して所定の税率を乗じて算出した法人税を支払いますが、欠損金の繰越控除で前年の赤字と相殺すれば、当年の法人税をゼロにできます。
さらにこのケースでは相殺しても、まだ相殺しきれない赤字が20万円残っており、翌年に持ち越すことも可能です。繰り越しができる期間は最長10年となっています。
欠損金の繰戻し還付
法人の青色申告では、「欠損金の繰戻し還付」という制度を利用することが可能です。この制度を使えば、赤字が出た事業年度の前年度に納付した法人税の一部が還付されます。
還付金額は以下の計算式を使って計算します。
還付金額=前年度の法人税額×(今年度の欠損金額÷前年の所得金額) 【計算例】前年の黒字150万円(法人税額は30万円)当年の赤字100万円 30万円×(100万円÷150万円)≒還付金額20万円 |
30万円未満の減価償却資産を一括で経費計上
税法上パソコンや事務机、車など取得価格が10万円以上するものは資産に計上し、数年にわたって費用化していく決まりになっています。
しかし青色申告事業者で所定の要件を満たす場合、30万円までの資産については、一括でその年度の費用にすることが可能です。
中小企業投資促進税制が利用可能
中小企業投資促進税制とは、新品の機械や装置などを取得したり製造ししたりして、国内の製造業、建設業といった指定事業に使った場合、その事業年度において特別償却や税額控除を認める制度のことです。
上限は、特別償却の償却限度額は基準取得価額の30%、税額控除は基準取得価額の7%です。
法人が青色申告をするデメリットは?
青色申告は、損益計算書や賃借対照表といった決算書の添付を求められるため、複式簿記の知識が必要です。
複式簿記とは、ひとつの取引において、原因と結果に振り分けて考える記帳方式です。資産の増加や負債の減少を左側の「借方」に記載し、資産の減少や負債の増加を右側の「貸方」に記載する仕組みのため、企業の財務状況が確認できるようになります。
複式簿記の記帳は複雑で、簿記の専門知識が必要なため、事業主自身で行うのは難しいかもしれません。別途専門家に依頼したり、自身で知識を身につけたりするなどの対応が必要になるでしょう。
しかし先に紹介したように、法人は青色申告をすることで多くのメリットが受けられます。損益計算書や賃借対照表で自社の経営状況も確認しやすくなることから、法人にとって、実質、青色申告をするデメリットはないと言えるでしょう。
法人が青色申告をするときの手続きの流れ
法人が青色申告をするためには、事前に「青色申告の承認申請書」を納税する所轄税務署に届出をして承認を受ける必要があります。ここでは、提出期限や提出方法、書き方を紹介します。
青色申告の承認申請書の提出期限
青色申告の承認申請書の提出期限は、「青色申告をしようとする事業年度開始の日の前日まで」です。決算日が9月30日の法人が、翌事業年度から青色申告をしたい場合、提出期限は9月30日となります。
また、新たに法人を設立して、初年度から青色申告をしたいときは、設立日から3ヶ月経過した日の前日までに青色申告の承認申請書の提出が必要です。
仮に期日に間に合わなくてもペナルティなどはありません。ただし、青色申告にしようとしていた事業年度は白色申告になってしまい、先に紹介したような青色申告のメリットが受けられなくなってしまいます。
青色申告の手続方法
青色申告の承認申請書は、国税庁のWebサイトからダウンロードが可能です。e-Taxを利用してインターネットで提出する方法もあります。
青色申告の承認申請書に必要事項を記入したら、納税する所轄税務署に提出しましょう。提出方法は所轄税務署に持参、郵送、e-Taxの3つです。
青色申告の承認申請書の書き方
青色申告の承認申請書は1枚のみで、記載する内容もさほど難しいものではありません。以下、同書類を記入するときの注意点を紹介します。
提出年月日
提出年月日の欄は、青色申告の承認申請書を提出する日を記入します。税務署に提出するときは提出日、郵送なら発送日を記入しましょう。
所轄税務署
税務署長殿と記載されている欄に、納税地を所轄する税務署を記載します。複数の支店がある法人の場合、本店所在地が納税地となります。
不明なときは、国税庁のホームページで検索が可能です。納税地の郵便番号か住所を入力すれば、所轄する税務署が表示されます。
所轄税務署
税務署長殿と記載されている欄に、納税地を所轄する税務署を記載します。複数の支店がある法人の場合、本店所在地が納税地となります。
所轄の税務署が不明なときは、国税庁のホームページで検索が可能です。納税地の郵便番号か住所を入力すれば、所轄の税務署が表示されます。
納税地
納税地欄には、法人の本店所在地と電話番号を記入します。固定電話がない場合は、携帯電話の番号を記入しても問題ありません。
法人名等・法人番号
法人名等の欄には法人名とフリガナを、法人番号欄には法人番号を記載します。まだ法人番号がないときは、記載不要です。
法人番号は、国税庁の法人番号公表サイトでも検索できます。
代表者氏名・代表者住所
代表者氏名とフリガナ、代表者住所欄には郵便番号と住所を記載します。2021年(令和3年)の税制改正で、税務関係書類のほとんどが押印不要となりました。そのため現在では、代表者氏名欄に実印を押印する必要がありません。
事業種目、資本金又は出資金額
事業種目欄には定款に記載されている事業目的のうち、主なものを記載します。資本金欄には、登記上の資本金額を記載しましょう。
いつから青色申告を始めるかを記入
青色申告を始める事業年度の開始日と終了日を記入します。
法人設立初年度から青色申告をするときは、設立日が事業年度の開始日となります。また必要事項の記入欄の下にあるチェック欄の2項目「この申請後、青色申告書を最初に提出しようとする・・」の項目にチェックをし、日付は設立日を記入しましょう。
帳簿組織の状況
最大6つまで記入可能ですが、すべて埋める必要はありません。青色申告では、総勘定元帳と仕訳帳は最低限必要になるため、この2つを記入します。「左の帳簿の形態欄」は、どのような形式で帳簿を作成するかを記載します。
会計ソフト、ノート、エクセルなど実態に合わせた内容を記載しましょう。記帳の時期は、記帳を「毎年」「四半期」など、更新するタイミングを記載する欄です。こちらも実態に合ったものを記載します。
特別な記帳方法の採用の有無欄
クラウドサービスや会計ソフトなど、パソコンなどを使うときは、電子計算機利用欄に〇をつけます。それ以外はチェック無しで問題ありません。
税理士の関与度合い、税理士署名欄
税理士が関与している場合におけるその関与度合い欄は、税理士と協議のうえ、記載していきます。税理士署名欄は青色申告の承認申請書を税理士に依頼しているときは、税理士に署名してもらいましょう。
まとめ
欠損金の繰越控除や繰戻し還付、30万円未満の減価償却資産の一括計上、中小企業投資促進税制が利用できるなど、法人にとってメリットが多いため、ほとんどの法人が青色申告を利用しています。
損益計算書や賃借対照表といった書類を、複式簿記で作る必要がありますが、メリットのほうが上回っており、実質、法人が青色申告をするデメリットはないといえるでしょう。
まだ青色申告をしていない法人は、なるべく早い事業年度から始めることをおすすめします。